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宮崎県宮崎市大橋1-94-1

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こどもの便秘

便秘の定義

こどもの便秘とは「便が滞った、または便がでにくい状態である」と定義されています。「便が滞った状態」とは、うんちの回数やうんちの量が減少した状態であり、「便がでにくい状態」とは、排便時の肛門の痛みで泣いたり、いきんでも排便できない状態のことをいいます。
さらに「便秘による(身体)症状が表れ、診療や治療を必要とする場合」を「便秘症」と定義しています。具体的な症状は腹痛、お腹の張り、お腹の不快感、うんちに関する不安、うんちの際の痛みや出血、げっぷ、口臭、集中力低下、食欲不振、肛門周囲の皮膚荒れ等のことをいいます。便秘の定義には、排便回数・排便頻度が含まれていないことに注目する必要があります。
排便習慣はそのとらえ方、考え方が人によって異なりやすいため、治療が必要な便秘であっても、治療されないことが多いことが問題です。
参考までに世界で使用されている(個人や地域による排便習慣を統一した)便秘診断の目安をご覧下さい。

4歳未満

1カ月の間に、以下の2項目以上を満たす

  • 1週間に2回以下の排便
  • 過度の便貯留があった
  • 痛みを伴う、あるいは硬いうんちがあった
  • 太い便があった
  • 直腸に大きな便の塊がある

トイレトレーニングを終了した児では、以下の追加項目を使用してもよい

  • トイレ習慣を習得した後、週に1回以上の便失禁
  • トイレが詰まるくらい大きなうんちがあった

4歳以上

1カ月の間に、以下の2項目以上が、1週間に1回以上起こる

  • 1週間に2回以下の排便
  • 週に1回以上のうんちのおもらし
  • うんち我慢の姿勢
  • 痛みを伴う、あるいは硬いうんちがあった
  • 直腸に大きな便の塊がある
  • トイレが詰まるくらい大きなうんちがあった

※世界で使用されている目安に合致していなくても、当院では排便回数が少ない、またはうんちに苦痛を伴う場合は積極的に治療しています。

有病率

こどもの便秘の頻度は小学生で10-20%、女子高生で30%とも言われています。便秘になりやすい時期は、

  1. 母乳からミルクに移行する時期や離乳食開始時
  2. 幼児期のトイレトレーニング中
  3. 小学校進学や学校でのトイレ回避

の3つが有名です。

予後

5歳以上の便秘のお子さんの25%程度が大人になっても便秘が持続すると言われており、こどもの頃よりにしっかり治療することの大切です。
従来から使用されている薬での治療成績は1年で薬が終了できるこどもは約25%、トイレトレーニングの終了した4歳以上に限ると約50%と報告されています。
薬が終了できても1年以内に大半が再発してしまうため、丁寧かつ長期間の診療が大切です。肌感覚では5年で50%が回復し、10年で80%が回復しています。

便秘のメカニズム

腸にうんちが到達すると、直腸の壁が伸び、脳を刺激し便意を感じ、内側の肛門の筋肉をリラックスさせます。さらに脳からのうんちをすると指令を出すと外側の肛門の筋肉をリラックスさせ、うんちがでます。
しかし、何らかの理由でうんちを我慢して、外側の肛門の筋肉がリラックスできない場合には、直腸にうんちが停滞します。
普段は空っぽのはずの直腸にうんちがたまると、直腸はのびのびになり、直腸の壁のセンサーが鈍くなります。センサーが鈍くなると、直腸から脳に伝わる信号が弱くなり、最終的には便意を感じにくくなります。
すると、内側の肛門の筋肉もリラックスできなくなり、よりうんちがたまりやすくなります。うんちがたまってくると、うんちの水分が吸収されてどんどん硬くなっていきます。
これらのうんちは水分を吸収し、硬く太くなっているので、うんちをしようにも踏ん張ってもなかなかできません。
なんとかうんちができても、おしりが切れてしまいます。おしりが切れてしまうと、うんちをする際に強い痛みが生じるのでなかなかうんちできなくなります。

便秘の悪循環

便秘のメカニズムを詳しく見てみると、
悪循環 が生じやすいことがわかります。

便秘のメカニズムを詳しく見てみると、悪循環 が生じやすいことがわかります。

便秘の悪循環の図

治療

ステップ1

大量のうんちが直腸にふたをしているときは、まずこれを取り除くことが最も重要です。具体的には1-3日間の浣腸を行います。病院で行うことも自宅で行うことも可能です。

ステップ2

これまで、うんちをすることに痛い、つらい思いをした経験があるこどもが多いです。こども達は「うんち=苦痛・恐怖」と脳にプログラムされており、これがうんち回避・うんち我慢の原因となっています。苦痛がないうんちができると、「うんち=気持ちいい・すっきり」と脳にプログラムされます。そのため、規則正しいうんちのための第一歩は、苦痛なくうんちできる状態を作ってあげることです。これを可能にするための大前提は、うんちのふたがしっかりステップ1で取り除かれていることが大切です。この状態にするためには、薬物療法が必要になってきます。

ステップ3

便秘のメカニズムでお話ししたように直腸のセンサーが不調のため、便秘となります。直腸のセンサーが回復するまで十分時間をかけることが大切です。これはなかなか難しく、正確にセンサーが回復したということを証明できる検査はありません。そこで参考にするのが、

  1. うんちがパンツにつかない
  2. うんちを我慢していない
  3. 硬い便をだすことがない
  4. 大きな、もしくは太いうんちがでることがない
  5. 毎日まとまったうんちがある

です。①〜⑤すべてできると直腸のセンサーが回復した可能性があります。

ステップ4

最終的には服薬中止が目標ですが、早く中止するとすぐに再発するのが便秘です。ステップ3がしっかりとできていることを確認することが治療成績の向上に繋がります。服薬を中止する場合も、いきなり中止するのではなく、徐々に薬を減らしながらすることがポイントです。また、再発しそうなときは服薬再開を躊躇しないことが大切です。

薬物療法

1浸透圧性下剤

治療の主役で便を軟らかくする効果があります。さらにメカニズムの違いにより2種類に分けられます。ひとつが50年以上前から使用されている由緒正しいおくすりで、浸透圧により身体から腸内へ水分を移動させ、便を軟らかくします。粉薬や錠剤タイプの酸化マグネシウム、シロップタイプのラクツロースシロップがあります。使用経験がとても豊富なため、赤ちゃんから使用できます。もうひとつが本邦では2018年から使用可能となったポリエチレングリコールは、薬自体が水分を保持して、うんちに直接水分を運ぶことで便を柔らかくします。体内に吸収されることがないため、副作用が少なく、2歳以上のこどもに使用できます。水に溶かして飲むタイプのおくすりです。ポリエチレングリコールは1包当たり60ccの液体に溶かして飲みますが、塩分を感じやすいため、オレンジジュース、アップルジュース、スープに溶かして飲むと飲みやすくなります。

2刺激性下剤

大腸を刺激して便意を催すし、排便させるおくすりです。当院では浸透圧性下剤のみで効果が不十分な場合にうんち回数を増加させるため目的で使用します。

生活指導

朝ごはんをしっかり食べて、通園・通学するまでの時間に余裕がある状況で、ゆっくりトイレをする時間を確保することが最も大切です。医学的にも食べ物が胃の中に入ると、大腸も活発に動く準備ができるようになります(胃結腸反射と呼びます)。このため、早寝早起きという規則正しい生活リズムを行うことは便秘治療にとても大切なことになります。
また、3歳前後はトイレトレーニングを行うには最も適切な時期ですが、この時期に我慢せずに、うんちを出し切る習慣をつけることもとても大切です。また、トイレトレーニング中にお薬を中止するとトイレトレーニングが長引く可能性があるため、注意深い見守りが大切です。
お薬を早く中止したい親御さんは多いですが、くすりは規則正しく毎日うんちをするくせをつける補助をしています。しっかりとした生活習慣を実践してみましょう。こどもの便秘が気になる方は是非、当院へお越しください。